3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

フランス人上司から学んだこと1

渡仏してすぐのころ、夫のフランス人の上司が

私たち夫婦をディナーに誘ってくれた。

 

フランスでレストランでのディナーに誘われたら、

それは <大人だけ> を意味している。

 

なんせディナー開始時刻は21時以降だし、

そこからメニューを熟読し、前菜、メイン、デザートと食べれば

そこそこ時間がかかる。

 

まさに <大人の時間> なのだ。

 

でもその頃といえば、、、、

 

1歳3か月の末っ子は授乳中。

4歳の長男は引っ越しの影響か、

必ず「おかーさーん」と真夜中に私のベッドに移動してきて、

一緒に寝るようになっていた。

 

パリで大人同士のディナー。

うむ、間違いなく素敵そう。

そりゃ行きたい!

 

けれど・・・息子たちの行動を考えると行ける気がしない、

行ったとしても楽しめる気がしない、

というのが正直なところ。

 

乳幼児を預けられるベビーシッターさんもなかなか見つからず、

せっかくのお誘いだったが、

「シッターさんが見つかり次第ぜひ」と濁していた。

 

それでも、夫はたびたび上司から

「彼女(私)はどうしているのか?」

「ベビーシッターが見つかったか?」

と幾度となく聞かれていたらしい。 

 

ついにしびれをきらした上司のHさんは、

もう子連れでよいから、と今度はビストロでのランチに誘ってくださった。

なんと当日は今お付き合いしている彼女を連れてくるという。

カップル文化である。

 

当日。

リュックを背負った快活で人懐っこい笑顔のHさんと、

知的な低い声と笑顔が魅力的な、明らかに大人な彼女。

 

おお、大人な2人だ♫

 

こういう出会いにわくわくした。

そして、ちょっと若作りの格好をした自分を後悔した。

 

パリに来て以来、歩いたことのないサンジェルマンデプレ界隈を

2人に案内されて歩く。

 

「ここが有名なカフェで政治家のたまり場だったの」 

「ここのアイスは有名だから子どもたちと食べましょう」 

「マルシェにチーズが出てるわね。試食してみたらいいわ」

 

至れり尽くせり。

 

石畳を3匹連れて歩く歩く。

子どもは大人に連れられて、だらだら歩くのが嫌いだが、

手に美味しいアイスがあれば不満はない。

 

街歩きを楽しんで、

壁中に小さな額縁がかけられた

なんとも味わい深いビストロに到着。

 

「実は昨日下見にきて、席も予約しておいたの」と彼女。

 

予約席はお店のコーナーにあたる部分で、

壁側半分がソファー席、手前半分が椅子席だった。

狭いけれどコージーな雰囲気に テンションも上がる。

これこれ!パリに来てこういうの待ってた!

 

ふと気づくと、

早くもわが子がソファー席に群がっている。

ここに決まってる~と言わんばかり。

いつも家族で外食時には、「ソファ席=こども」だったので、

彼らにとっては自然な行動だった。

 

子どもに続いて、

赤ちゃん連れの私がソファ席かな?と動こうとすると、

 

 

ん??おやおや??

 

 

 目の前には、戸惑いの表情を浮かべる彼女。

 

 

「なんていうのかしら・・

 席はどうするのがいいかってね」

 

 

なにやらHさんと相談している。

 

 

「ん??・・・・・・・ああ!」

 

 

彼らの言いたいことを察知した私は、

子どもたちに交渉、いや号令。

 

 

「君たち、ここに椅子を足すから端っこにいってくれる?」

 

 

「えーー!!ソファがいいのに!」

 

 

予想外にぶーぶー言いまくる子どもたち。

もうお絵かきセットも広げている。

一方で大人たちは座らずにこの動向を見守っている。

 

私は、静かに、ゆっくりと、

そして、これ以上ないほど目力を使って言った。

 

「今日は大人と大人でお話しするから

 真ん中を大人のためにあけてちょうだい。

 子どもコーナーはこの角につくるからね」 

 

母親というのは、有無を言わさぬ空気を醸すのが得意である。

 

 

 「ふああい」

 

 

そう。

もとはといえば、今日私たちを誘ってくれたのは、

私たち夫婦と話をしようと考えてくれたからなのだ。

 

子どもが座の中心で、

大人同士が散り散りに離れて座るなんて

ありえなかったのだろう。

 

子どもたちがテーブルの角に移動し、

私たちはペア同士、真向かいに座ることができた。

<大人の場所> の完成である。

 

子どもたちもあてがわれた

<こどもの場所> で遊びだした。

 

彼女も「これでいいわね!」と大いに納得した様子。

 

断わっておくが、

パリの人が子ども嫌いというわけではない。

子どもにもよく話しかけてくれる。

 

でも、ある場面では

フランスでは大人とこどもは空間を別にするのだ。

寝室しかり、食事しかり。

 

そして、大人同士が話しているときに、

子どもが割って入ることは歓迎されない。

 

フランスでの子どもの扱いは、

子ども大好きスペインとも、ちょっと違う。

 

何事も <子ども中心> で暮らしてきた私には、

子どものいる夫婦であっても、カップルでのディナーに誘われたこと、

また、この日のこの小さな「配席問題」は

<大人中心>のフランス文化を感じさせるのに十分な出来事だった。