3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

電車で見た母娘の姿と、母になった私と娘

高校生だったころ、電車でこんな光景を見た。

 

長い座席に、母親と3歳くらいの幼い子が2組、座っている。

しばらくすると、片方の女の子が何が気に入らないのか、ぐずり始めた。

初めのうち、母親は気にも留めない様子で、

もう一人の母親と話していたが、

女の子のぐずりがなかなか止まずエスカレートしてきたので、

 

「そんなに泣いたらお母さん嫌いになっちゃうよ!」

 

と一喝した。

 

すると、どうだろう。

女の子の表情がみるみる変わり、

 

「お母さん嫌いにならないで!」

「お母さん本当に嫌いになったの?」

「お母さん笑って」

 

と、母親が彼女の方を向くまで、

「嫌いになってないよ!」という言葉をもらうまで、

必死の形相で懇願し続けたのだ。

 

このとき、学生だった私は、母親の顔を覗き込み、

苦し紛れな笑顔すら見せている幼子を見て、胸がつぶれる思いがした。

子どもにとって、愛されているという実感がいかに必要不可欠なものか、

そして、それにも関わらず、「愛」とはその性質上、

自分の意志で獲得することが容易ではない事柄なんだと痛烈に感じたのだった。

 

 

時は流れ、私も母になった。

第1子の娘が3歳になってすぐのころ、

やたらと「ママだいすき!」を連呼している時期があった。

最初は「うんありがと、ママもだよ」と答えていたが、

彼女は、何度答えても何度も同じことを言うのだ。

 

「ママだいすき!」

 

だんだんと確認をとるような感じに聞こえてくる。

 

「ママなんてだいっきらい!」

 

これは言葉はネガティブだが、

全幅の信頼を寄せている人に発することができる言葉だ。

子どもは嫌われないという自信があるから「だいっきらい」なんていうのである。

 

でも「だいすき」ばかり言うのは不安の表れだろうな・・・

だんだんと娘の「だいすき」が重たくなってくる。

娘は「だいすき」を何度も言わなければならないほど不安なのだろうか。

こんなに我慢強く、いい母していると思うのにな・・・

 

「ママ笑って」 

「ママってどういうとき笑う?」

 

こんなことも言うようになった。

え・・・毎朝の「おはよう」からめっちゃ笑っているつもりだった。

でも、娘にはわかっていたのだ。

私が心から笑えていないことを。

 

学生時代も、社会人時代も、

多くの仲間に囲まれていることが好きだった私の生活は、

結婚し、出産し、専業主婦になったことで激変した。

「よいお母さん」になりたい。

そう思って自分で選んだ道だったが、

夫は忙しく、その頃は流産も経験し、

娘と一対一の生活を一人で引き受けているうちに

心身とも疲れてしまっていた。

でも「よいお母さん」でいようと一生懸命笑っていたのだった。

 

娘の言葉に、

高校時代に電車で見た母子の姿を思い出す・・・

 

 

そんなある日、

かつて働いていた会社の同期たちで会うことになった。

同期の自宅に、わいわいと子連れで集まるのだ。

私は心躍りながら娘と久しぶりに電車で遠出した。

横に並んで景色を見ながら話すのは新鮮なものだった。

 

同期の家。

わーげんき?と黄色い声がとぶ。

厳しい研修をともに乗り越えた気心知れた仲間たち。

実に気楽。赤ちゃん~幼児までそれぞれの子どもが自由に過ごしている。

みんなで握った娘の大好きなおにぎりもある!

 

私は久しぶりにほっとした気持ちで、娘から目を離し、

仲間たちとのおしゃべりに花を咲かせた。

 

夫のこと、こどもの成長のこと、

そして、会社員時代の面白い話。

なんでみんなこんなに話がおかしいんだろう。

おかしくておかしくてテーブルにつっぷして涙が出るほど笑った。

 

あーーー楽しかった!!

 

そうやって、帰りの電車に乗り、座席に座ると、

娘が言った。

 

「ママ、今日ママ笑ってたね!」

 

「え?」

 

「ママ今日たのしかったね!!」

 

くまのぬいぐるみと一緒に私のとなりに座ってる娘。

とっても嬉しそうな顔をしているじゃないか。

娘は勝手に遊んでいたようで私のことをしっかり見ていた。

私がげらげら笑っているの見て、よかった!と心から喜んでくれていたのだ。

 

あついものがこみ上げて、目に涙がたまる・・・

 

「だいすき」を繰り返す娘を見てずっと苦しい気持ちだった。

でも今はただただいとおしかった。

 

母子は写し鏡。

きっと娘は日々私が苦しそうで、

そのことをつらい気持ちでいてくれたんじゃないだろうか。

「だいすき」「わらって!」

そうやって私を励ましてくれていたのだ。

  

そう。

こどもはいつだって、ママがだいすき。

ママがこどもの幸せをねがっているのとおなじかそれ以上に

「ママも幸せであること」を願っているのだ。

 

だから言いたい。

Love yourself,ママ!

 

いらいらしてしまうとき、もやもやとつらいときは

誰かとつながって、誰かと話して、誰かに子どもを見てもらって、

あなたが心からリラックスする時間をとること。

 

そして、欠点があろうが、家事が滞っていようが、

そのまんまの自分でだいじょうぶだと自信をもつこと。

こどもがあなたを責めているなどと考えないこと。

 

だって「こどもはいつだって、どんなあなただって、だいすき」だから。

 

無条件に愛してくれるこどもたち。

そのことをぎゅーっと抱きしめたら、

あなたとお子さんの心がほどけてくるのを感じるはずです。