3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

チェコのサンタさんに教えてもらったこと6

ドレスデンからプラハへ。冬旅行記。これまでのお話(1~5話)ーーーー

チェコのサンタさんに教えてもらったこと1 - 3児のママが見たヨーロッパ

チェコのサンタさんに教えてもらったこと2 - 3児のママが見たヨーロッパ

チェコのサンタさんに教えてもらったこと3 - 3児のママが見たヨーロッパ

チェコのサンタさんに教えてもらったこと4 - 3児のママが見たヨーロッパ

チェコのサンタさんに教えてもらったこと5 - 3児のママが見たヨーロッパ

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赤ちゃん含め、

一家総出で部屋を案内してくれるという

初のチェックインスタイル。

彼らはここに普段住んでいるわけではなく、

貸し部屋として購入したようだった。

 

 

家主の女性は、

ひとしきり案内を終えると

茶目っ気のある瞳でこう言った。 

 

 

 

「今日はね、ちょっとしたプレゼントがあるのよ」

 

 

 

そう言って、冷蔵庫を開ける。

 

 

 

ん・・・??

 

 

 

冷蔵庫には、頼んでいた朝食セット以外にも

大きなタッパーがいくつか入っていた。

 

 

 

「今日のあなたたちのディナーよ」

 

 

 

えっ・・・

 

 

え、えええええええええーーーーっ!!!!

 

 

 

 

「これはね、チェコ家庭の一般的なポテトサラダなの」

 

「で、これは魚料理。味をつけてマリネしてあるから

 フライパンで焼けばいいだけよ」

 

「それでこれはチェコのビール」

 (ピルスナーウルケルだ!知ってる!)

 

「そしてスパークリングワインもね」

 

 

真新しい冷蔵庫にきれいにならぶタッパーたち。

そしてドアポケットには、

お行儀よく並ぶウルケルとスパークリングワイン。

 

 

予想外すぎて、

目を丸くするばかり。

 

 

なに?どういうこと?

子どもが病気だって言ったから?

宿の人がこんなことをしてくれるの?

 

 

 

ドレスデンでどれだけ食べ物を探し歩いただろう。

今日もまた、

人けのないこのプラハの片隅で、

ぎすぎすと夫婦喧嘩でもしながら、

食料を探す旅をしないといけないと思っていたよお・・・

 

 

 

ここに全部ある!!ワインまで。。

感激で言葉がうまく出ないわたしに、

彼女はこう言った。

 

 

 

 「だって、今日はクリスマスだもの」

 

 

 

 

彼女の言ったこの言葉を思い出すと、

今でも、涙がこぼれそうになる。

 

 

 

そうか。

そうだったのか。

クリスマスってこういう日だったんだ。

 

 

 

マッチョなご主人は、パンを家で焼いているから

それをあと1時間くらいしたら持ってくるよと言った。

 

 

 

「あななたち旅行行くんじゃないんですか?」

 

「郊外の実家に行くだけだから大丈夫。

 ほしい薬とかあれば家から持ってくるよ」

 

  

最低限あるから大丈夫と伝えた。

なんと優しい人たちなんだ・・・

 

 

 

困っている時に

手を差し伸べてもらうことが

これだけうれしいことだったとは。

初めて知った気持ちだった。 

 

 

 

マッチョなパパは両手で持つほどの

大きな黒い雑穀パンのようなものを

使い込んだ穴あきの布巾に包んで持ってきてくれた。

ほんのり甘くてあったかいずっしりしたパンだった。

 

 

 

パスタも使いさしだけどあるよって。

明日には、近くのスーパーが開くことも教えてくれた。

チェックアウトは鍵置いておけばいいのね。

心からの感謝を伝えて、

お別れを言った。

 

 

 

夕食。

抱っこしているうちに寝た末っ子をベッドに置き、

ランチョンマットを敷いて、平皿を並べる。

ポテトサラダは栄養たっぷりの具沢山。

4切れの魚も丁寧に焼いた。

部屋中にいい匂いがする。

お皿にお魚とポテトを盛り付ける。

パンもスライスして食卓の中心に置いた。

 

 

キッチンの卓上バスケットには、

彼らがフルーツをもてんこもりに入れてくれていた。

そのとなりには、クリスマス柄の紙皿に

チェコの可愛らしいクッキーがいっぱい入って

ラップがかけてあった。

 

 

チェコのスパークリングワインのミニ瓶を開けて

夫とわたしのグラスに注ぐ。

 

 

なんということだろう。

病児とマック生活、

冷たいパンやお菓子をかじる生活から脱却して、

温かいお魚、手作りパンとワインで乾杯とは。

もう寒空の下を歩き回らなくてよいとは!

 

 

 

乾杯!と明るい声を出すと、

ここ数日、強ばっていた気持ちがほどけるようだった。

 

 

 

マリネしたあった白身魚を食べると、

めちゃくちゃ美味しい!

どうやって味付けしてあるんだろう?

 

 

ポテサラは普段小食の長男が「うんめ~」と

お代わりしている。 

美味しそうに食べる子どもを見るのって

こんなにうれしかったっけ。

 

 

あったかい食事がのどを通って、

ワインものどを通って、

感謝が体じゅうをかけめぐる。

 

 

I am blessed.

 

 

 

チェコの若いご夫婦のやさしさが胸にせまって、

食べているのに油断すると涙ぐんでしまう。

しあわせな気持ちだった。 

 

 

そうか、クリスマスってこういう日だったんだ。

初めてクリスマスの意味を分かった気がした。

 

 

だれかがだれかに<差し出す>ということ。

恵みに感謝するということ。

 

 

この人たちに会うために、

この旅に出たんだな。

 

 

 

 

 

末っ子はしっかり発熱し続け、

夜中にも抱いて寝かしつけたり、

嘔吐も何度かしたけれど、

洗濯機できれいに洗濯もできたし、

(しかもパリの家にはない乾燥機能つき!)

シャワーもきれいだったし、

ベッドも十分ひろくて、

タオルも十分足りていて、

こころゆくまで看病してくださいというような家だったから、

わたしは「夢のプラハ散策」は気持ちよく捨てて、

感謝しながら看病することができた。

 

 

翌日には、近所のコンビニみたいなスーパーで

鶏肉を買ってきてもらい、

寸胴鍋で大量の鶏スープもつくれた。

 

 

日に日によくなった末っ子は

最終日にはよく笑うようになっていた。

夫のすすめで、

わたしもプラハ見物に出ることができた。

 

 

あいにくの雨だったが、

スメタナのモルダウが大好きなわたしは

市民会館(スメタナホール)だけは行きたいと思っていた。

 

 

娘とチェコの路面電車に乗り、中心部へ。

わあ、そうかあ。これがプラハなんだあ。

 

真っ先に館内ツアーを予約しに行き、

ランチ後ガイドツアーに参加した。

 

その国、その国ごとに、独自の色彩があるなあ。

チェコの色合い。

ミュシャの手掛けた装飾。

素敵だ。

いつかまた、ここでモルダウ聴けたら幸せだろうなあ。。

 

  

さあ、パリに帰ろう!

 

 

実を言えば、

末っ子発熱中に夫も一日だけ発熱していた。

さらに、

帰りの飛行機の機内では、

はしゃぎすぎた末っ子が突然のジュースリバース( ;∀;)

 

しかし・・・

看病生活でカンが冴えわたっていたわたくし。

持っていたビニール袋でスーパーナイスキャッチ!

どこも汚れずに済み、ほっ。

 

もーーなんでもこいやー!!

旅の最後の最後までこれかー笑うわ・・・

 

末っ子は機上で爆睡し、

パリに着くころには元気いっぱいになっていた。

 

結果、家族全員、

元気に出発!

元気に帰宅!

 

 

旅行中だけ3人もふせってたって・・・ 

何しに行ったんだ(笑)

 

 

レストランも行けなかったし、

家族写真も撮れなかったし、

観光名所もぜんぜん周りきれなかった。

看病で肩も凝った。 

 

 

けれど、

短い時間でも、

ドイツのクリスマスを感じることができた。

鳩時計も買えた。

プラハでは夢の場所だけは見ることができた。

 

 

なにより、

チェコの若夫婦の思いがけない行動によって、

経験したことがないような

幸せな気持ちを味わわせてもらった。

 

 

あのプラハのアパートメントでの夕食は、

私にとってまぎれもなく、

人生で最高の<しあわせな食卓>だった。

 

 

 

 

< だって今日はクリスマスだもの >

 

 

 

この言葉。

ほんと今でも胸いっぱいになるのです。

ありがとう。

チェコのサンタさん。

あなたたちに会いに行ったんです。

あなたたちがくれた優しさをわたしも誰かに返せますように。