3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

パリが大嫌いなおじさんの話3

前々回のお話はこちら↓

tomo-rainbow.hatenablog.com

 

前回のお話はこちら↓

tomo-rainbow.hatenablog.com

 

そのフランス人のおじさんは、

私と会うたびにパリを悪く言うのだが、

それは私が外国人だから言いやすかったんだろう。

 

「今日はあたたかくていいですね」と言っても、

「でも、このあたたかさも今日で終わりさ」と取り付く島もない。

 

 

私だって、

例えばパリの路上の不衛生さに辟易しているのだが、

先に、あれだけ言われてしまうと、

 

「そう、道だって汚いですしね!」とは言わず、

 

「そうですよねえ。

 でもまあいいところもあると思いますよ」

 

なんて言っちゃうところが、

人間っておもしろいもんだなと思う。

 

 

とにかく、

おじさんの挨拶がわりのパリバッシングに

わたしもすっかり慣れていた。

 

 

そんなネガティブ発言連続のおじさんが

一度だけネガティブ要素ゼロの会話をしてくれたことがある。

 

 

おじさんは手にセピア色の写真を持っていて、

エレベーターでそれを私に見せてくれた。

 

 

「これ誰だと思うかい?」

 

 

そこには、

目鼻立ちのはっきりした美しく若い女性と

育ちのよさそうな品のいい男性が寄り添って写っていた。

女性の顔は、そのおじさんに似ていた。

 

 

「あなたのご両親ね!」

 

 

おじさんは、笑顔で大きくうなずく。

 

 

「お母さまほんとにきれいな人。

 あなたに似てる」

 

 

そうでしょ?と

誇らしそうに自分の顔と

写真を並べて見せてくれる。

 

 

「あのいつも連れているOld Ladyは、

 かつてこんなに美しかったんだ。

 その貴重な証拠さ」

 

 

どうしてそのとき、

その写真を持っていたのかは分からない。

どことなく喜々としながら自分の階で

エレベーターを降りていくおじさん。

 

「よい一日を!」

 

 

あ、おじさん今日はあの言葉言わなかったな。

幸せそうな顔してたな。

私までほんわかした。

 

 

 

おじさんは、

カリフォルニアにずっといたかったが、

母親の体調が悪くなって一緒に暮らすために

パリに戻ってきたこと。

 

パリに来てから、奥さんが働き、

自分は、通院、薬局、散歩、看病、買い物の日々で、

ずっと母親といる生活だということ。

 

カリフォルニアでは、

仕事して、結婚して、子どもを育てて、

幸せな思い出がいっぱいあること。

 

そんな話や近況を

会うたびにちょこちょこ話してくれる。

 

 

パリが嫌いで、

カリフォルニアという土地が好き。

 

 

という簡単な話じゃなかったんだな。

 

 

彼の人生の輝かしい時代の舞台が

カリフォルニアだったんだ。

それを太陽の陽射しとともに覚えているんだろう。

 

そして、今の生活や

母親が変化していくことへのつらい気持ちが

パリのすべてを嫌なものに思わせているんだろう。

 

 

おじさんは、

いつも気長に散歩に付き合って、

母親にイライラした様子を見せたりするところを

一度も見たことがない。

他人にも紳士的な人だ。

 

 

私は通りすがりの存在だが、

人生のいろいろな面を見せてくれる

おじさんとの会話をひそかに楽しみにしている。

 

おじさんにとっても私との少しの会話が

リフレッシュになっていたらいいのだけども。

 

 

美人のお母さまとご家族で

よいクリスマスとなりますように。