3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

雪の日に思うパリのホームレスのおじさん2

前回のお話はこちら。 

tomo-rainbow.hatenablog.com

 

次の日。

完全に母性が湧いてきた私は、

とにかくその人に栄養をつけてほしいと思った。

 

玄米おにぎりでも持っていきたかったが、

西洋人の口には合わなかろうと。

ここはサンドイッチかな。

 

差し出すにしても一つ、心に決めていた。

それは、<無理はしない>。

自分の生活第一。

その範囲でできること。

 

家にあるものでポテサラをつくっていたから、

ポテサラと卵のサンドイッチをつくって、

ラップで巻いた。

あとは夫が履かないと言っていたまだきれいな靴下。

お水は大きなペットボトルを脇に置いていたからいいか。

 

断捨離して余分な毛布とかがない。

あの大きなフリースとっておけばよかった。。

 

そんなことを考えながら

サンドイッチと靴下を紙袋に入れて持っていく。

 

その人はベッドに腰かけていた。

私のフランス語力からして言えたことは、

「ボンジュールムシュー」

紙袋を差し出すと、まるで日本人のように会釈して

メルシと小声でその人は言った。

 「どういたしまして」

あまり表情を変えずにさっと帰った。

 

 

偽善という言葉がある。

でも偽善でもいいと思った。

目の前にいたから。

それでいいんじゃないかと。

 

それに、今日も変わらず寒いけど、

あなたを気にかける人がいる、ということを伝えたい気持ちがあった。

辛いことばかり経験しているかも知れないけれど

世の中、悪い人ばかりじゃないってことを少しでも感じてほしかった。

それはエゴかもしれない。

 

次の日は、バナナと

防寒にも、汚物の処理にも使えるだろうと新聞紙を持って行った。

 

他にも誰かが寄付したようなスーパーのエコバックがおいてあり、

私は、他にも支えている人がいるのだとほっとした。

(バルセロナいるときも思ったことだが、スーパーやパン屋で買った袋を

ごそっと袋ごと渡す太っ腹な人もこちらでは結構見かけるのである)

 

 

その次の日は、余裕がなく、行かなかった。

 

 

そして週末。

夫がちょうど処分しようと思っていたという

セーターを出してくれた。

暖かそうなしっかりしたセーターで、

これを中に着れば随分暖かいのじゃないかとうれしくなった。

さらに冷え込んだその日はカボチャスープを作ったから、

飲んでほしくてプラスチックの深皿に入れて

プラスチックのスプーンをつけて持って行った。

 

あれ?

 

マットレスはあったが気配がない。

荷物は一部あった。

 

迷ったが、帰ってくるかもとスープもセーターも

人目につかないように置いてきた。

 

 

翌日、

スープもセーターも毛布も全部なくなって、

その人はどこかへ消えた。

 

 

 

ふふううう。。。。

 

 

 

その人のために何かを準備することは苦痛ではなかった。

何もしないよりむしろ癒された。

 

でも、いなくなったことが分かったとき、

心底ほっとした自分がいた。

 

もう悲しい姿を見なくて済むからだ。

 

 

おじさんはどこか別の場所へ行ったのだろうか。

他のホームレスの人たちと交流する姿もなく、

たくましさとは無縁の、ひょろりと頼りなげで、

優しいのだろうと感じられるひと。

きっといいおうちで育ったのだろうひと。

 

おじさんどこかで生きてますか。

粉雪舞うパリの街を見ながら、貴方を思い出しています。