3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

祖母の遺した手紙と息子の宇宙カレンダー

息子はこちらの小学校一年生。

学校で宇宙について勉強しているらしい。

宿題があるというので、

ひとまず普段ほこりをかぶっている「宇宙」の図鑑を持ってこさせた。

 

水金地火木土天海・・・という例の太陽系の配列を

英語で言いながらダンスしている。

 

私は以前たまたまこの図鑑を開いて、

びっくり仰天した「あのこと」をもう一度読みたくなり、

『宇宙の歴史』というページを開いた。

こう書いてある。 

 

 

 

「『宇宙カレンダー』※

 

 宇宙の誕生を 1月1日 午前0時としたとき、

 

 太陽系の誕生が 8月31日ごろ、

 

 生命の誕生が 9月21日ごろ、

 

 恐竜の絶滅が 12月30日午前6時26分ごろ

 

 人類の誕生は 12月31日午後11時52分ごろ

 

 

 

 

 

 

 

!!!!!!!!

 

 

 

 

 

人類おーーーーっそ!!!

 

 

 

 

 

現在=大みそかの年越しの瞬間としたときに、

人類誕生は8分前・・・

 

 

歴史って長いと思っていたのに

卑弥呼も紫式部も真田幸村も

カエサルもマリーアントワネットもマッカーサーも

あなたもわたしも

宇宙からしたらこれぜーんぶたった8分間以内の出来事なんだ・・・・

(いやそれも現代人の歴史なんてほぼ23時59分の出来事らしい) 

 

 

 

私たちって刹那です・・・・

 

 

 

 

でも、刹那だけど、決して薄っぺらいわけじゃない。

この宇宙から見たらごくわずかな瞬間に、 

途方もない数の先人たちが、

それぞれの時代を懸命に生きのびて、

短い人生の中で出会った人との間に子どもが生まれて、

つながってつながってつながって

今の人たちにバトンが回ってきた。

 

刹那だけど、その8分てどんなけ。

でも宇宙からしたらたった8分か。

いやーちっぽけな存在。

うん。でも偶然ともいえることも含めて

何かが違っていたら

全てが違っていたし、違っていくわけで。

 

今存在していることってほんとうに奇跡。

同じ時代に、家族として、友人として、出会ったことも奇跡。

 

 

などと思いつつ、

次の瞬間、

 

 

 

はい!もうゲームやめなさーい!!

 

 

 

と叫ぶ、現実を生きるわたし。

これが生活( 一一)

 

 

 

でもなんか

子どもの図鑑でちょっと宇宙旅行したような

新しい視座をもらったような気分。

 

 

 

で、さらに思い出したのが、

3年前に97歳で亡くなった祖母の遺した手紙だ。

「遺言」と題して祖母が92歳の時に書いたみんなへの感謝の手紙。

母がコピーしてくれたのをちょうど今日、片づけしながら見つけたのだった。 

 

いつも読んでびっくりするのが、

冒頭にこう書かれていたことだ。

 

 

「数ある天体の中でも生存の出来る地球の上に生れ、

 最も気候の良い日本に生れ、

 その中でも住み易い兵庫県で生活出来た事は非常に幸せな事でした」

 

 

え!

おばあちゃんってこんな風にものを見る人だったんだ。

人生を振り返るときに宇宙から入るってすごいな。

 

そしてこうも書いてある。

 

 

「日本に生れた事を喜びながら生きてください」

 

 

おばあちゃんは

その年代の人がみなそうであるように戦争も経験し、

苦しい貧しい時代も経験した。 

 

戦後、家業の商売を軌道に乗せ、

さらに年老いて店じまいしてからは

おじいちゃんとよく老人クラブの団体ツアーで海外旅行に行っていた。

祖母は英語が好きかつ得意で結婚前は商社で働いていたこともあるらしい。

小さいころ夏休みに遊びに行くと、

ヨーロッパやアフリカやアジアへ旅行したセピアがかったアルバムを見せてくれたっけ。 和菓子より洋菓子を好む祖母だった。

 

でもそうやって世界も見たけれど、

やはり日本だよってとても誇りを持っていたんだなあ。

祖母の考えていたことは生前の会話ではあまり分からないことだった。

 

手紙には他にも

皆様に助けられ楽しい人生を終えることができます、ということと

孫7人とひ孫7人がみな賢い子でご先祖様に感謝しているということも書かれていた。

 

そして、

法事を簡素にしてほしいということと、

最後にこう書かいてある。

 

 

「すべての物に感謝を忘れずに生きて下さい さようなら」

 

 

 

祖母はつらいことも大変なこともあっただろうに

それを一ミリも見せないひとだった。

姿勢が良くて品があって控えめで、

でもおしゃれが好きでつねに向学心のある人だった。

 

そんなことを思い出していたら、

小学生のころにタイムスリップ。

大きな家ではないけれど、

おじいちゃんが庭にホースで夏に水を豪快に撒いていた姿や、

これまた豪快なくしゃみ、

おばあちゃんがふかふかの座布団を並べてくれて、

夏らしいガラスの器に冷たい美味しい麦茶を入れてくれたこととか、

いつも「はあ、おかげさまで。ありがたいことです」とにこにこしていたこととか、

わたしが可笑しなことを言うと

「はっはっは!」と目を細めて手を口にもっていって笑うさまとか

小さかった頃の夏の帰省のひとときの光景が

断片的だけれど鮮明に思い出される。

なんだか体によさそうなものがいっぱい出てくる台所。 

じぶんの家と違って寒くてあまり行きたくないトイレ。

そこにかけてあった日めくりカレンダー。

弟と夜、障子で影絵をしたこと。

サウンドオブミュージックのVHSを見せてもらってすっかり魅せられたこと。

とまらない思い出。

 

 

ささやかなふつうの暮らしって

なんていとおしいものなんだろう。

  

 

祖母の遺した手紙を読んで、

宇宙カレンダーを読んで、

 

今置かれた場所に、身近なひとに、

感謝する、ということを

丁寧に生活する、ということを

もう一度意識してみようと思うパリの夜です。

 

 

※出典:小学館の図鑑NEO「宇宙」2012年版