3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

ポーランドからきたパリの運転手さん

海外でタクシーに乗るときはどうも緊張する。

密室だし、やはり感じの良い人がいい。

他にも、

最短の道を通ってくれるだろうか・・

ぼったくられないだろうか・・

と基本的な心配も。

 

それに、私はもともとおしゃべり好きなので、

タクシーでは世間話でもしたいのだが、

不自由なフランス語ではハードル高い。

 

感じの良い人だといいな・・・

 

そう思って、病院帰りにタクシー乗り場に行くと、

タトゥーをしたごっつい腕と頭に巻いた赤いバンダナが見える。

 

ひえーー今日は強面の運転手さんかな・・と思いつつ、

ボジュームシュー、乗っていい?と近づいていくと、 

そのおじさんは、笑顔とともに軽快な足どりで降りてきた。

 

「赤ちゃんを抱えてください。ベビーカーたたみますから」

「あ、このくっついてるおしゃぶりは車内に持っていかなくていいのですか」

 

まあ!ここはパリだというのになんと気の利く人だろう!

今日はいい日だ~!!

気づけば車内から大音量で聞こえてくるショパン。

おじさんは軽快な足どりで運転席につくとショパンの音量を落とす。

 

「あの、○○までお願いします」

「えーっと、、」と住所をナビに打ち込む。

「あれ?おかしいなあ、、出ないなあ、、」

「あのースペルこれですよ」

「はい。でもなぜか出ないんです、、、」

「あ、じゃあ○区のショッピングセンターわかります?」

「ああ!あそこにはニッコーホテルがありますよね?」

「あ、今ノボテルになってますよ」

 

親切。行き先が通じている。完璧。

 

すっかり気の緩んだ私は、ほっと息子と座る。

フランス語の不自由さを察したおじさんが英語で話しかけてきた。

 

「ぼく、タクシー運転手になって一か月なんです」

「そうですか。道を覚えるのは大変でしょう」

「昔住んでいたから、大体のことは分かるけど、ナビがないと全然ダメです。

 ところであなたは日本人ですか?それとも韓国人とか?」

「私は日本人です。あなたは?」

「ポーランド人です」

「わあ!ポーランドですか?ポーランドの焼き物は素敵ですよねえ。

 あっ!あとキュリー夫人!!ポーランドの人でしたよねえ」

「マリア・スクドロフスカです。ノーベル賞とったんですよ」

「もちろん知ってますよ」

「一度じゃないです。女性で二度も!二度です。

 そして化学賞と物理学賞ととったのは彼女しかいない。

 アインシュタインも彼女を尊敬していた。

 ワルシャワにマリアとアイシュタインと一緒に映った写真がありますよ」

熱くなるおじさん。

ついていける私。

だって、小学生の時、キュリー夫人の漫画伝記を愛読していたから(笑)

小さい時の記憶力ってすごい。ここで生きてくるとは!!

 

「前はニースでスーパーのトラック運転手してたんです」

ニースと言えば、パリからしたらうらやましい太陽サンサン、ビーチリゾート。

いいところじゃないですか!と言いかけたら、おじさんは言った。

「もう日差しに疲れちゃって・・」

「え?」

「みんないいところっていうけど、それはバカンスでちょっと行くからですよ。

 僕みたいな北の人間があんなに日差しのきついところに住んだら、

 もうきつくてきつくて」

 

なるほど。みんなが憧れる場所でも、住むと違うってあるんだなあ。

で、思い出した。

私もバルセロナに渡航したばかりの頃、

まるで肌に刺してくるような、日本とは質の違う日差しに、

ただ歩いているだけで疲れちゃってたことを。

うんうん。意味わかります。

 

「クラシックが好きなんですか?」

「あ、いや、、これはパリのお年寄りをいい気分にさせるためにかけてるんです」

「へえー」

「お年寄りは難しいですよ。

 パリの人は冷たいといわれるけど、若い人は礼儀正しい人が多いです。

 けれど、お年寄りは違う。主張がすごいから。

 道で喧嘩するのもお年寄りですよ」

ショパンをかけていたのは、そういう理由だったのか。

でもそのとき私は気づかなかった。ショパンがポーランド人だってことを。

 

おじさんもすっかり私との会話を楽しんでるようだった。

ポーランドの若者は大体英語が話せることとか、

好きなアーティストが日本のヨコハマでPVか何かの撮影をしたんだとかいう話をしてくれた。

 

気づけば家の前。

「ありがとう!楽しい時間でした」

 

英語が通じたおかげで、

本当に久しぶりに現地の人と話せたことが

脳みその刺激となり楽しかった。

 

おじさんは最後まで丁寧にベビーカーを広げてくれた。

「あなたは素晴らしい女性ですね。よい一日を!」

 

おじさんこそ、素晴らしい運転手さんだ。

心を込めて一生懸命働くポーランドから来たおじさんに会って、

私はすっかりよい気分だった。