3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

パリの託児所の先生から学んだこと

我が家の3番目、末っ子はただ今2歳4か月。

最近、週2回フランスの託児所に通わせ始めた。

 

私は長女の幼稚園入園以来、5年ぶりの一人時間を獲得し、

カフェでコーヒーを飲んだり、背筋を伸ばして颯爽と(の気分!)

行きたい店を渡り歩きながら、いいねえとニヤケている。

 

パリの託児所がどこもそうだとは思わないが、

最初の1週間は連日登園の「慣らし期間」だった。

 

1日目は、1時間お母さんと一緒に遊んで帰る。

2日目も、1時間お母さんと一緒に遊んで帰る。

3日目は、1時間のうち、15分だけ母親が外出。

4日目は、1時間のうち、30分だけ母親が外出。

5日目は、最初の10分一緒で、あとの1時間は母親外出。

6日目は、最初から2時間、母親外出。

 

とまあ日本人も驚く丁寧さである。

 

連日、母と一緒に同じ場所を訪れることで、

こどもが「場所」と「先生の顔」に慣れていくのを感じる。

また、自分の「お母さん」と「先生」が親しく話しているのを見て、

日に日に先生に心を許しているように見える。

 

新しい託児所。パリにしては珍しく広々として、遊具も豊富。

私も息子も、最初の2日間ですっかりその場所を気に入った。

 

3日目。初めて息子が私と離れる日。

いつもの家での息子の様子を見ていると、

来客が多いからか、他の大人にも案外平気であるし、

過去2回、シッターさんをうちに呼んで見ていただいた時も、

数時間、愚図らず兄弟と一緒に楽しく過ごしていたので、

私はまたいつものように「そーっとその場から消えよう」としていた。

 

玄関に向かうと、若い先生が追いかけてくる。

 

「ねえ、〇〇にママがいなくなること言ったの?」

 

「(ええええ、、、言わないほうが泣かないよ・・)言わなきゃだめ?」

 

「そうね」

 

引き戻される。

ベテランのD先生が、そこにはいた。

私は言い訳じみて言った。

 

「彼は私がいなくなっても知らずに楽しく遊ぶタイプで・・・」

 

すると、彼女は毅然と言った。

 

「それはだめよ。

 彼にママはいなくなるけれど、必ず戻ってくるということを

 理解させる必要があるの。」

 

「ここは、あなたが安心して楽しく遊べる場所で、

 こどものための場所であって大人の場所でないこと。

 あなたは楽しく遊ぶ、お母さんも外で楽しい時間をすごす」

 

「そして、必ず、お母さんは事前に約束した通り迎えに来ることを

 こども自身に分からせないといけないの」

 

「そうでないと、ひとしきり泣き終えてからも、

 どうしてママはいないんだ?って理解できずに

 不安になってずっとぐずぐず言うのよ」

 

「だから言わないで行くなんでことは意味がないわ。

 たとえ最初は泣いてもね。きちんと説明しておくことに意味があるの。

 できれば前日の夜から話をしておくのがベストね。

 子どもだって言われていることが分かるのよ」

 

説明責任。

こどもを一人の人間として扱うこと。

そんなことを言われているような気がした。 

 

息子は、私が出ていく時には、わんわん泣いて、

迎えに来た瞬間も、安堵から「おかーしゃーん」と泣いていたが、

私はその度に

「〇〇くん、ただいま!ほーら、おかあさん帰ってきたでしょ♪」って

くどめに言った(笑)

 

6日目に迎えに行ったときには、

シャボン玉で楽しく遊んでいて、私を見ても泣かなかった。

「おかーしゃん、おかえりー!シャボン玉みてー」っていう感じ。

うん。この場所をわかってきてる。 

パリでスリに遭いました・・

先日、海外生活5年目にして初めてスリに遭いました・・・

 

平日、午後2時過ぎ。

ATMで150ユーロおろした私は、

子どもの学校へ行くためにバスに乗って。

着席シートが満席+数名くらいの混み具合。

いつものように後部入口すぐの、

ベビーカー置き場にベビーカーを置いて、そのすぐ後ろに立っていた。

 

もうすぐ降りるバス停。 

ものすごーく寒い日で、手がかじかんで

両手打ちでメッセージを打っていたiPhoneを

斜め掛けにしたいつものバッグにしまおうして、

 

あれ????

ぺしゃんこだ・・・え?やられた??

携帯触ってるんじゃなかった。

でもかばんは体の前にあって、私の体はぴったりベビーカーにくっついていた。

マグネット式の蓋を開けられたような感触は感じなかった。

知人がされたように底をナイフで切られたのかとカバンをひっくり返す。

切られてない。

そもそも、乗車中、人と触れ合ったこともなかった。

カバンはずっと前にあったのにどうして?どうやって??

 

周りを見渡す。微笑む老人と目が合う。

 

なに?いつ??

あっっ降りなきゃ!

 

すられた瞬間を全く把握できなかった私は、

まるでマジックにかかったかのような、きょとん状態。

 

まさかそんなはずはと、

ぺしゃんこバッグを叩いてみたり、ふたを開けてみたり、

もしやベビーカーのどこかに財布があるのじゃないかとのぞいてみたり、

無駄な抵抗を試み、そして現実を受け入れた。

まずいな。事務処理-----っっ!!

 

幸いにも、パスポートも、フランスの居住許可証も、

車の免許証も入れていなかった。

ID関係を失くす方が手続きが面倒なので、

夫はそのことをよかったと言った。

夜中の日本にも電話し、処理処理処理。

路上にいたから車の音で、日本のカード会社の人の声がとおいとおい。

 

「カードを停止いたしました。

 後日新しいカードをご実家に送付いたします」

 

ふうやりきったぞ!!

そして、どーんと凹む・・・・

 

私は用心深いほうで、

普段からバッグをぽんと置いたりしないし、

周りも用心深く見るし、

斜めがけしているバッグは必ず前にしているし、

カード決済時も暗証番号を見られないように、とか

いちいち気を付けるタイプ。

 

6年前に日本から出張中の夫がパリオペラ座前で

署名活動を装った女性たちにすられたと連絡があったときには、

内心「わきが甘いんじゃーー!」と思ったっけ。

 

はあ、やっちまったなあーーー

バルセロナ、ロンドン、パリ、そして旅行先、

5年間ノー被害でやってきた自負がもろくも崩れ去りました。

これが「慣れたころに」ってやつか。

 

警察に被害届を出さないと証明書がもらえないので、 警察に。

「現場近く」の警察に行ったところ、

「現住所近く」の警察に行くように言われ、

翌朝、指定の警察に行くと、

クレジットカードを止めたとはいえ、

一日はおかしな引き落としがないか様子を見なさいと言われ退散。

そして翌朝一番、3度目の正直で書類作成と相成りました。

 

警察のお兄さんが英語ができたことと、

日本を旅行したことがあるとか、

お好み焼きが好きだとか言っていて、

警察で「間抜けな日本人」として馬鹿にされるのでは

と思っていた私はやや癒されて。

 

友人から聞いた話では、

・その路線のバスにはスリが常駐している。

・本当は財布よりiPhoneがほしいらしい。

・娘の学校の父兄が何人もiPhoneや財布をすられている

 

後日、法廷通訳として警察にもよく出入りしている

フランス語の先生に話したところ、

・組織犯罪で犯人はひとりではない

・おそらくATMで下したところを見られて、つけられたか、

 別のバス停付近のメンバーに知らされて実行された

・路上でも、バス内でも、触れ合ってないとなると、

 バスに乗り込むとき、両手でベビーカーを押し上げているときに

 一緒に乗り込みながら財布を抜いた。

・思ったより金額が少ない!って犯人は思ってるかもって(おいおい笑)

という総括でした。

 

犯人の顔を知らないから警察にそれも言ったのですが、

思えば3人くらいの若い男性が乗ったと思ったらすぐ降りてしまって、

??なんでだろう、とは思ったんだった。

あれは、乗車時にもう目的を達成したからだったのかもしれない。

 

それから、子どもを引き取り、彼らの元気な笑顔を見て、

財布は盗られたけど、子どもは3人とも元気でここにいる。

最悪の事態ではない。大事なものはここにある。

と妙に感動してしまった。

 

その後、友人たちに話すと、出るわ出るわ被害話。

・子連れで歩いているときに、道端で若者数名に囲まれ恐喝。

・ギャラリーラファイエットのエスカレーターでバッグを開けられるも、

 子どもの手を引いていたのでバランスがとれず、十分に抵抗できなかった。

・道で女性に後ろから両脇を抑えられ、その間に別の女性が財布を抜いた。

などすべて子連れ日本女性の体験談。

 

暴行に近いものも含め、パリのスリものすごく多いです。

彼らはプロです。

本当にまずい状況になったら、抵抗しないこと。

できそうなら、周りに助けを求めましょう。

 

みなさんの教訓になりましたら幸いです。

フランス語のずきゅんワード

こちらの人は知らない人同士でも、よく声をかけあうのだが、

代表的なのが、体や荷物が相手に触れたときや、

相手の道をふさいでいた、なんて時に、

「Pardon!  パードン」と声を発すること。

 

フランス旅行しただけでも何回聞くか分からないだろう。

私は学生時代のパリ旅行で、

どこかの建物のせまく長いらせん階段をおりていくとき、

登ってくる人たちが次々に連呼する

パフドン!パフドン!パフドン!攻撃に

思わず笑ってしまったほどだ。

(当時はパフドンと聞こえたが、今はパードンと聞こえる。

 いずれにしてもrはフランスっぽい音)

 

今は、常にベビーカー連れというのもあり、

私もいつでもどこでも「パードン」連発。

例えば、スーパーの売り場を歩いていて出会い頭に、

妙齢のマダムが仁王立ちしていようものなら、

さあ「パードン」の出番です!

 

まず目をしっかり合わせて、

軽やかに「パードン、マダム」にこ。

 

はい、合格!

これで無作法とはみなされないでしょう。

 

で。

昨日、スーパーで品物を運んでいる男性店員のカートと、

私のベビーカーがちょっとあたってしまい、

反射的に「パードン」を登場させたところ、

 

セモア、マダム

 

となんとも紳士的なまなざしで返事があった。

 

C'est moi,madame

 

これは、パードンを言うのは私の方です、という意味。

なんかよくないですか?この言葉。

 

あとから考えたら、私が止まっていて、あちらが来たので、

あなたは謝る必要がない、ということでしょう。

 

パードンにセモア。

 

うんなんかいい(笑) 

 

一般的に日本人は謝りすぎる、と言われるのですが、

つい、こちらもごめんなさい、あなたも大丈夫ですか?

というニュアンスで「パードン」使ってしまいます。

 

次は私も「セモア」と言えるようになろうっと。

頭上注意で歩きましょう

バルセロナであった本当の話。

 

娘を学校に送り、息子をベビーカーに乗せて、

マンション(ピソ)が並ぶいつもの道を歩いていると、

背中に風を感じたかと思ったらドンっ!とすごい音。

思わず身をかがめ、振り返ると、

 

な、なんと!!!

レンガが一つ、木っ端みじんになっているではありませんか!!!

 

なぜか、オーーーマイゴッ!

と口から出てきた私。

 

(たぶん、海外スイッチが入ってた。でとっさに出たのが英語)

 

こ、これは・・・

私ちょっと遅かったら死んでたよね・・・

この赤いベビーカーの息子の頭上だったら・・・

 

一階の美容院からセニョーラが出てきた。

大丈夫??けがないの??

ないっす・・・てか口が乾いて声が出ないっす・・・

 

誰やねん!!って上を見ると、毛むくじゃらの腕が

7階くらいから出て、なにやら、窓周りの作業してる。

落ちたことには気づいてない。

 

本当なら被害者を増やさないためにも、

直接本人に指摘したかったが、

なんせ動揺していた。

その女性に上を指して、あの人よと言い残して、

いそいそと家路についた。

 

ああびっくりした。ほんとうに。

危機一髪ってこういうこと??

 

それにしても。

こんなことってある?

あるんだな。

でもあんな作業じゃ、これまでだって被害者いてもおかしくないよ。。。

 

ここは日本じゃない。

平時でも頭上注意。

 

そう思ってたら、パリでも工事現場からなんかふってきた。

娘と息子がキックボードで通ったそのあと、

ウレタンマットにエル字のプラスチックを巻いたようなのが、

ビルの外壁の角から剥がれ落ちてきたのだ。

 

ひーーーレンガより軽いけど、高さあると凶器だよねえ。

 

先進国だと安心してはいけない。

いろいろと降ってくることを考慮したほうが良いです。

特に工事現場、作業人の下。みなさま要注意。

 

 

ポーランドからきたパリの運転手さん

海外でタクシーに乗るときはどうも緊張する。

密室だし、やはり感じの良い人がいい。

他にも、

最短の道を通ってくれるだろうか・・

ぼったくられないだろうか・・

と基本的な心配も。

 

それに、私はもともとおしゃべり好きなので、

タクシーでは世間話でもしたいのだが、

不自由なフランス語ではハードル高い。

 

感じの良い人だといいな・・・

 

そう思って、病院帰りにタクシー乗り場に行くと、

タトゥーをしたごっつい腕と頭に巻いた赤いバンダナが見える。

 

ひえーー今日は強面の運転手さんかな・・と思いつつ、

ボジュームシュー、乗っていい?と近づいていくと、 

そのおじさんは、笑顔とともに軽快な足どりで降りてきた。

 

「赤ちゃんを抱えてください。ベビーカーたたみますから」

「あ、このくっついてるおしゃぶりは車内に持っていかなくていいのですか」

 

まあ!ここはパリだというのになんと気の利く人だろう!

今日はいい日だ~!!

気づけば車内から大音量で聞こえてくるショパン。

おじさんは軽快な足どりで運転席につくとショパンの音量を落とす。

 

「あの、○○までお願いします」

「えーっと、、」と住所をナビに打ち込む。

「あれ?おかしいなあ、、出ないなあ、、」

「あのースペルこれですよ」

「はい。でもなぜか出ないんです、、、」

「あ、じゃあ○区のショッピングセンターわかります?」

「ああ!あそこにはニッコーホテルがありますよね?」

「あ、今ノボテルになってますよ」

 

親切。行き先が通じている。完璧。

 

すっかり気の緩んだ私は、ほっと息子と座る。

フランス語の不自由さを察したおじさんが英語で話しかけてきた。

 

「ぼく、タクシー運転手になって一か月なんです」

「そうですか。道を覚えるのは大変でしょう」

「昔住んでいたから、大体のことは分かるけど、ナビがないと全然ダメです。

 ところであなたは日本人ですか?それとも韓国人とか?」

「私は日本人です。あなたは?」

「ポーランド人です」

「わあ!ポーランドですか?ポーランドの焼き物は素敵ですよねえ。

 あっ!あとキュリー夫人!!ポーランドの人でしたよねえ」

「マリア・スクドロフスカです。ノーベル賞とったんですよ」

「もちろん知ってますよ」

「一度じゃないです。女性で二度も!二度です。

 そして化学賞と物理学賞ととったのは彼女しかいない。

 アインシュタインも彼女を尊敬していた。

 ワルシャワにマリアとアイシュタインと一緒に映った写真がありますよ」

熱くなるおじさん。

ついていける私。

だって、小学生の時、キュリー夫人の漫画伝記を愛読していたから(笑)

小さい時の記憶力ってすごい。ここで生きてくるとは!!

 

「前はニースでスーパーのトラック運転手してたんです」

ニースと言えば、パリからしたらうらやましい太陽サンサン、ビーチリゾート。

いいところじゃないですか!と言いかけたら、おじさんは言った。

「もう日差しに疲れちゃって・・」

「え?」

「みんないいところっていうけど、それはバカンスでちょっと行くからですよ。

 僕みたいな北の人間があんなに日差しのきついところに住んだら、

 もうきつくてきつくて」

 

なるほど。みんなが憧れる場所でも、住むと違うってあるんだなあ。

で、思い出した。

私もバルセロナに渡航したばかりの頃、

まるで肌に刺してくるような、日本とは質の違う日差しに、

ただ歩いているだけで疲れちゃってたことを。

うんうん。意味わかります。

 

「クラシックが好きなんですか?」

「あ、いや、、これはパリのお年寄りをいい気分にさせるためにかけてるんです」

「へえー」

「お年寄りは難しいですよ。

 パリの人は冷たいといわれるけど、若い人は礼儀正しい人が多いです。

 けれど、お年寄りは違う。主張がすごいから。

 道で喧嘩するのもお年寄りですよ」

ショパンをかけていたのは、そういう理由だったのか。

でもそのとき私は気づかなかった。ショパンがポーランド人だってことを。

 

おじさんもすっかり私との会話を楽しんでるようだった。

ポーランドの若者は大体英語が話せることとか、

好きなアーティストが日本のヨコハマでPVか何かの撮影をしたんだとかいう話をしてくれた。

 

気づけば家の前。

「ありがとう!楽しい時間でした」

 

英語が通じたおかげで、

本当に久しぶりに現地の人と話せたことが

脳みその刺激となり楽しかった。

 

おじさんは最後まで丁寧にベビーカーを広げてくれた。

「あなたは素晴らしい女性ですね。よい一日を!」

 

おじさんこそ、素晴らしい運転手さんだ。

心を込めて一生懸命働くポーランドから来たおじさんに会って、

私はすっかりよい気分だった。

美人姉妹に不思議がられたこと

バルセロナ時代のこと。

 

娘の通学途中、バスでよく会う同じ学校の女の子たちがいた。

娘の学年の一つ上と一つ下の姉妹だ。

どうやらお金持ちのお家のようで、

いつもナニーと一緒に通学していた。

 

お姉ちゃんはちょっとおすましさんで、

かわいいというより美人。

わずかに大人の女性の風情を漂わせている。

 

妹の方はくりくりとしたよく動く青い目が人懐っこく、

いつでもケラケラ笑っているような子だった。

いつも娘を見つけると、

隣に座りたいとナニーに懇願する。

 

その日、私はいつもならベビーカーに座らせている一歳の息子を

珍しく <抱っこひも> に入れて、

帰りのバスに乗っていた。

 

妹の方が大きな瞳でじーっと私が息子を抱いている様を見ている。

そして、言った。

 

「あなたはなぜ赤ちゃんを抱っこしているの?」

 

「え?うんと・・そうね、

 彼はいま機嫌が悪くてこれがいいみたい」

 

すると、いつもあまりしゃべらないお姉ちゃんがすかさず言った。

 

「じゃあなぜあなたはベビーカーも持ってきているの?

 ベビーカーがあるのに抱っこしているなんて」

 

 

(・・・・・た、たしかに)

 

 

私からすると、たとえベビーカーに乗せていても、

ずっといい子に座っているとは限らない。

愚図って人さまに迷惑かけないように、

いざとなったらさっと抱いて移動できるように、

保険として抱っこひも。 

これ結構ありませんか?

 

日本ではよく見る光景でも、

幼い彼女には

ベビーカーという大きな道具がそこにありながら、

それを使わずして、

重そうなこどもを抱っこひもに入れている私は

明らかに奇妙だったのだ。

 

ちなみに。

バルセロナの住宅街で抱っこひもに息子を入れて歩いていると、

結構じろじろ見られた。

抱っこスタイルが可愛いというような視線もあれば、

珍しい、もしくは怪訝そうな視線もあった。

 

というのもこちらの人たちは、

ベビーカー(それも結構ごっついの)でどこへでも行くからだ。

バスにも4台は入るし、

スーパーも、デパートも、カフェもベビーカーでいっぱいだった。

赤ちゃん好きのお国柄。だれも拒まない。

 

ベビーカーにおしゃぶりをした赤ちゃんを入れて、

時にミルクや瓶詰の離乳食をあげながら、

悠々とカフェでお茶をする人たち。

 

メトロにはエレベーターがないところも多い。

石畳でぼこぼこした道もある。

けれど、どこでもベビーカーで行く。

 

日本のお母さんが赤ちゃんを抱っこ紐に入れて、

さらに両手にスーパーの買い物袋を提げて歩いているのを見たら

さぞびっくりすることだろう。

なんの修行なの?

重いのになぜベビーカーを使わないの?と。

 

うーーーん。

抱っこのほうが子どもが安心するから。

肩はものすごく凝るけど、それさえ我慢すれば身軽に動けるから。

人の手を借りずに済むから。

ベビーカーの赤ちゃんが騒いで、

周りの人に白い目でみられるという事態を避ける最終兵器として。

かな。

 

バルセロナを去るころには、

巻物のようなスリングにごく小さい赤ちゃんを入れている

ロハスな感じの奥さんもたまーーーに見るようになった。

デパートにも片隅に抱っこひもが売られていた。

 

ベビーカー主流のバルセロナでも

抱っこひもの良さを感じる人は増えているのかな?

きっと使う理由は、赤ちゃんと母親の快適性。

<人さまに迷惑をかけないため>ではなさそうだ。

魔法の言葉「マダム」

パリに住んで一年になる。

フランス語のレベルは挨拶とスーパーのレジ通過可能レベル・・

マルシェで込み入った会話とかはできない・・

大抵のことを笑顔とジェスチャー、それに推測とウィで乗り切っている(笑)

 

以前住んでいたバルセロナで使っていたスペイン語は

べたーっと発音するところが

日本人にとても合っていた気がする。

書いてある文字をそのままカタカナでローマ字読みする感覚。

 

フランス語は聞いたことのない特有の音がいっぱい聞こえてくる。

心のハードルが上がる上がる・・・

その点、子どもは上手ですね~。

例えばトレビアンのレ。トヘビアンという感じ。

母がやると何か違うらしい。

 

来た当初は、

それまで話していたスペイン語の脳みそが切り替わらず、

どうしてもウィをシィ(スペイン語の「はい」)と言ってしまい、

それを直すだけで4か月かかったっけ・・・

 

それと特有といえば、

リエゾンなど滑らかにつなげて読む習慣。

 

これは笑い話なんだけれど、

例えば、「子ども」という単語が「アンファン」と覚えても

あまり意味がない。

私はいつも3人連れているので、

エレベーターで一緒になる人にかなりの頻度で

「レゾンフォン」と言われていたが、

最初は意味が全く分からず、???で、

レゾン何とかという単語があるのかと

夫に聞いたり、真剣に辞書で調べていた。

すると、それは複数形の冠詞のついた「子どもたち」という単語だったのだ。

 ※Les enfants(レゾンフォン=こどもたち)

アンファンのアの字もないじゃん!

 がーん・・・耳で聞いて覚えるしかない。うん。

 

ところで。

フランス語が分からないなりに日々暮らしていて、

やはりその重要性を感じ、

これだけははったりきかせてやってます、というのは挨拶。

あなためっちゃ話せるんじゃない?と誤解されるくらい流暢に挨拶できます(笑)

 

大事なのは目とタイミング、若干のイントネーション。

そして印象のよい挨拶の最大のコツは、

最後に必ず「マダム」か「ムシュー」をつけること。

 

とりあえずこの挨拶をマスターすれば、

通りすがりの人や、お店の人にそれなりの人物として

認識してもらうことができます。

 

最後につける「マダム」。

これは言われてみればいかに気分がよいかがわかります。

 

 ボンジュールマダム (こんにちはマダム)

 メルシーマダム (ありがとうマダム)

 パードンマダム(失礼マダム)

 

最後にマダム、と添えられるだけで、

背筋が伸び、にこやかに返事をすることができる魔法の言葉。

 

日本語のマダムって、イメージ的に高級感あふれるというか、

時に冷ややかにも使われますが、

こちらでは女性への尊敬の念を表している感じ。

(マドモアゼル(未婚)とマダムで迷ったら

 マダムにしておくことが無難だそう。

 女性の価値は若さじゃないのです)

 

不愛想な人も多いパリですが、

お店でも、マンションでも会った人にマダムと声をかけられると

とても尊重された気分になり、

その言葉にふさわしい行いのできる女性であろうとする自分がいます。

女性を成長させてくれる言葉のよう。

ムシューと言われる男性もしかり。

 

先日、最高にうれしかった「マダム」は

雨の日にすれ違ったお年を召したムシューが

頭のベレー帽をちょっと持ち上げて、にっこりと

 ボンジュールマダム

と言ってくれたとき。

 

寒い雨の日、子どもの体調不良、週末の一人買い出し、

はあ~と歩いていたが、

ムシューの紳士的な挨拶で、

一気に(!)ほわーっと温かい気持ちになった。

 

挨拶ってすごいな。

 

欧州大陸にあって、いろいろな国とぶつかった歴史があって、

互いに敵でないことを示す意味でも挨拶は重要だったんだろうな。

スペインもそうだったけれど、

フランスも挨拶がすごく大切にされている国。

なので挨拶できないと軽蔑される可能性大・・・

 

郷に入れば郷に従え。

日本にいるとお店側が挨拶することはあっても、

お客側が挨拶して入店することはあまりないように思いますが、

ヨーロッパを旅行するときは、

常に自分から目と目を合わせて挨拶しましょう。

きっといい気分で過ごせる確率が著しく上がることでしょう。 

日曜日のバルセロネータ2

住宅街に人影がない日曜日のバルセロナ。

みんな海や山に繰り出していたのだった。

(もしくは親族の家で集合ランチ)

 

バルセロネータと呼ばれる海沿いを歩いて見える景色は

誰もが渇望するであろうビーチリゾート。

まぶしい!

 

ビーチで焼いている人に目が行くが、

よく見ると、水着でなく普段着でビーチの手前にある歩道を

たくさんの人がそぞろ歩きしている。

 

海辺の光と風と匂いを浴びながら、

老若男女がただただ歩いている。

歩くことを楽しんでる。

 

日本で、普段の日曜日ってどう過ごしていたかな?

あんまり思い出せない。

買い物したり商業施設をぶらぶらしていたんだろうか。

 

お店が全部閉まっていると、仕方ないから潔く別のことができるな。

そんなことを思いながら歩いていたら、

 

「ひゃっ!うわーへー!えーー?ほほーーー」

 

と思った光景が目に飛び込んできた。

 

砂浜の片隅に一人のビキニ姿の女性が寝転がっている。

その横にはベビーカー。新生児から使えるフラットタイプだ。

そしてその中にまさに「新生児」と思われる赤ちゃんが入っている。

 

どひゃーー!

日本じゃ1か月健診までは外出すらはばかられるというのに。

 

赤ちゃんへの日差しを遮るように

外部取り付け式の日傘がかかっていて、

すやすやと寝ている赤ちゃん。

そして同じくすやすやと寝る堂々ビキニ姿のお母さん。

 

自由だ!

 

日本のように湿度がないので、

日陰は涼しく快適。

完全リラックスムードの産後ママと赤ちゃんの姿。

 

ランチに訪れたレストランでも

生後2週間という赤ちゃんを連れた若い夫婦とおばあちゃんに遭遇。

ベビーカーに入れたまま優雅に食事している。

レストランの人もニコニコ。

 

気候とミルク育児のなせる業とはいえ、

そもそも誰も母親の行動をとがめない。

産後も果敢にリフレッシュする母親たち。

ところ変わればである。