3児のママが見たヨーロッパ

バルセロナ・ロンドン・パリで暮らしてきた3児の母からの欧州の風便り。長年の主婦生活で抱えていたいらいら&もやもやをコーチングがきっかけで払拭。あなたはあなたのままでいい。みんなちがってみんないい。一緒に「よい母親」より「幸せな母親」になりましょう。

頭上注意で歩きましょう

バルセロナであった本当の話。

 

娘を学校に送り、息子をベビーカーに乗せて、

マンション(ピソ)が並ぶいつもの道を歩いていると、

背中に風を感じたかと思ったらドンっ!とすごい音。

思わず身をかがめ、振り返ると、

 

な、なんと!!!

レンガが一つ、木っ端みじんになっているではありませんか!!!

 

なぜか、オーーーマイゴッ!

と口から出てきた私。

 

(たぶん、海外スイッチが入ってた。でとっさに出たのが英語)

 

こ、これは・・・

私ちょっと遅かったら死んでたよね・・・

この赤いベビーカーの息子の頭上だったら・・・

 

一階の美容院からセニョーラが出てきた。

大丈夫??けがないの??

ないっす・・・てか口が乾いて声が出ないっす・・・

 

誰やねん!!って上を見ると、毛むくじゃらの腕が

7階くらいから出て、なにやら、窓周りの作業してる。

落ちたことには気づいてない。

 

本当なら被害者を増やさないためにも、

直接本人に指摘したかったが、

なんせ動揺していた。

その女性に上を指して、あの人よと言い残して、

いそいそと家路についた。

 

ああびっくりした。ほんとうに。

危機一髪ってこういうこと??

 

それにしても。

こんなことってある?

あるんだな。

でもあんな作業じゃ、これまでだって被害者いてもおかしくないよ。。。

 

ここは日本じゃない。

平時でも頭上注意。

 

そう思ってたら、パリでも工事現場からなんかふってきた。

娘と息子がキックボードで通ったそのあと、

ウレタンマットにエル字のプラスチックを巻いたようなのが、

ビルの外壁の角から剥がれ落ちてきたのだ。

 

ひーーーレンガより軽いけど、高さあると凶器だよねえ。

 

先進国だと安心してはいけない。

いろいろと降ってくることを考慮したほうが良いです。

特に工事現場、作業人の下。みなさま要注意。

 

 

ポーランドからきたパリの運転手さん

海外でタクシーに乗るときはどうも緊張する。

密室だし、やはり感じの良い人がいい。

他にも、

最短の道を通ってくれるだろうか・・

ぼったくられないだろうか・・

と基本的な心配も。

 

それに、私はもともとおしゃべり好きなので、

タクシーでは世間話でもしたいのだが、

不自由なフランス語ではハードル高い。

 

感じの良い人だといいな・・・

 

そう思って、病院帰りにタクシー乗り場に行くと、

タトゥーをしたごっつい腕と頭に巻いた赤いバンダナが見える。

 

ひえーー今日は強面の運転手さんかな・・と思いつつ、

ボジュームシュー、乗っていい?と近づいていくと、 

そのおじさんは、笑顔とともに軽快な足どりで降りてきた。

 

「赤ちゃんを抱えてください。ベビーカーたたみますから」

「あ、このくっついてるおしゃぶりは車内に持っていかなくていいのですか」

 

まあ!ここはパリだというのになんと気の利く人だろう!

今日はいい日だ~!!

気づけば車内から大音量で聞こえてくるショパン。

おじさんは軽快な足どりで運転席につくとショパンの音量を落とす。

 

「あの、○○までお願いします」

「えーっと、、」と住所をナビに打ち込む。

「あれ?おかしいなあ、、出ないなあ、、」

「あのースペルこれですよ」

「はい。でもなぜか出ないんです、、、」

「あ、じゃあ○区のショッピングセンターわかります?」

「ああ!あそこにはニッコーホテルがありますよね?」

「あ、今ノボテルになってますよ」

 

親切。行き先が通じている。完璧。

 

すっかり気の緩んだ私は、ほっと息子と座る。

フランス語の不自由さを察したおじさんが英語で話しかけてきた。

 

「ぼく、タクシー運転手になって一か月なんです」

「そうですか。道を覚えるのは大変でしょう」

「昔住んでいたから、大体のことは分かるけど、ナビがないと全然ダメです。

 ところであなたは日本人ですか?それとも韓国人とか?」

「私は日本人です。あなたは?」

「ポーランド人です」

「わあ!ポーランドですか?ポーランドの焼き物は素敵ですよねえ。

 あっ!あとキュリー夫人!!ポーランドの人でしたよねえ」

「マリア・スクドロフスカです。ノーベル賞とったんですよ」

「もちろん知ってますよ」

「一度じゃないです。女性で二度も!二度です。

 そして化学賞と物理学賞ととったのは彼女しかいない。

 アインシュタインも彼女を尊敬していた。

 ワルシャワにマリアとアイシュタインと一緒に映った写真がありますよ」

熱くなるおじさん。

ついていける私。

だって、小学生の時、キュリー夫人の漫画伝記を愛読していたから(笑)

小さい時の記憶力ってすごい。ここで生きてくるとは!!

 

「前はニースでスーパーのトラック運転手してたんです」

ニースと言えば、パリからしたらうらやましい太陽サンサン、ビーチリゾート。

いいところじゃないですか!と言いかけたら、おじさんは言った。

「もう日差しに疲れちゃって・・」

「え?」

「みんないいところっていうけど、それはバカンスでちょっと行くからですよ。

 僕みたいな北の人間があんなに日差しのきついところに住んだら、

 もうきつくてきつくて」

 

なるほど。みんなが憧れる場所でも、住むと違うってあるんだなあ。

で、思い出した。

私もバルセロナに渡航したばかりの頃、

まるで肌に刺してくるような、日本とは質の違う日差しに、

ただ歩いているだけで疲れちゃってたことを。

うんうん。意味わかります。

 

「クラシックが好きなんですか?」

「あ、いや、、これはパリのお年寄りをいい気分にさせるためにかけてるんです」

「へえー」

「お年寄りは難しいですよ。

 パリの人は冷たいといわれるけど、若い人は礼儀正しい人が多いです。

 けれど、お年寄りは違う。主張がすごいから。

 道で喧嘩するのもお年寄りですよ」

ショパンをかけていたのは、そういう理由だったのか。

でもそのとき私は気づかなかった。ショパンがポーランド人だってことを。

 

おじさんもすっかり私との会話を楽しんでるようだった。

ポーランドの若者は大体英語が話せることとか、

好きなアーティストが日本のヨコハマでPVか何かの撮影をしたんだとかいう話をしてくれた。

 

気づけば家の前。

「ありがとう!楽しい時間でした」

 

英語が通じたおかげで、

本当に久しぶりに現地の人と話せたことが

脳みその刺激となり楽しかった。

 

おじさんは最後まで丁寧にベビーカーを広げてくれた。

「あなたは素晴らしい女性ですね。よい一日を!」

 

おじさんこそ、素晴らしい運転手さんだ。

心を込めて一生懸命働くポーランドから来たおじさんに会って、

私はすっかりよい気分だった。

美人姉妹に不思議がられたこと

バルセロナ時代のこと。

 

娘の通学途中、バスでよく会う同じ学校の女の子たちがいた。

娘の学年の一つ上と一つ下の姉妹だ。

どうやらお金持ちのお家のようで、

いつもナニーと一緒に通学していた。

 

お姉ちゃんはちょっとおすましさんで、

かわいいというより美人。

わずかに大人の女性の風情を漂わせている。

 

妹の方はくりくりとしたよく動く青い目が人懐っこく、

いつでもケラケラ笑っているような子だった。

いつも娘を見つけると、

隣に座りたいとナニーに懇願する。

 

その日、私はいつもならベビーカーに座らせている一歳の息子を

珍しく <抱っこひも> に入れて、

帰りのバスに乗っていた。

 

妹の方が大きな瞳でじーっと私が息子を抱いている様を見ている。

そして、言った。

 

「あなたはなぜ赤ちゃんを抱っこしているの?」

 

「え?うんと・・そうね、

 彼はいま機嫌が悪くてこれがいいみたい」

 

すると、いつもあまりしゃべらないお姉ちゃんがすかさず言った。

 

「じゃあなぜあなたはベビーカーも持ってきているの?

 ベビーカーがあるのに抱っこしているなんて」

 

 

(・・・・・た、たしかに)

 

 

私からすると、たとえベビーカーに乗せていても、

ずっといい子に座っているとは限らない。

愚図って人さまに迷惑かけないように、

いざとなったらさっと抱いて移動できるように、

保険として抱っこひも。 

これ結構ありませんか?

 

日本ではよく見る光景でも、

幼い彼女には

ベビーカーという大きな道具がそこにありながら、

それを使わずして、

重そうなこどもを抱っこひもに入れている私は

明らかに奇妙だったのだ。

 

ちなみに。

バルセロナの住宅街で抱っこひもに息子を入れて歩いていると、

結構じろじろ見られた。

抱っこスタイルが可愛いというような視線もあれば、

珍しい、もしくは怪訝そうな視線もあった。

 

というのもこちらの人たちは、

ベビーカー(それも結構ごっついの)でどこへでも行くからだ。

バスにも4台は入るし、

スーパーも、デパートも、カフェもベビーカーでいっぱいだった。

赤ちゃん好きのお国柄。だれも拒まない。

 

ベビーカーにおしゃぶりをした赤ちゃんを入れて、

時にミルクや瓶詰の離乳食をあげながら、

悠々とカフェでお茶をする人たち。

 

メトロにはエレベーターがないところも多い。

石畳でぼこぼこした道もある。

けれど、どこでもベビーカーで行く。

 

日本のお母さんが赤ちゃんを抱っこ紐に入れて、

さらに両手にスーパーの買い物袋を提げて歩いているのを見たら

さぞびっくりすることだろう。

なんの修行なの?

重いのになぜベビーカーを使わないの?と。

 

うーーーん。

抱っこのほうが子どもが安心するから。

肩はものすごく凝るけど、それさえ我慢すれば身軽に動けるから。

人の手を借りずに済むから。

ベビーカーの赤ちゃんが騒いで、

周りの人に白い目でみられるという事態を避ける最終兵器として。

かな。

 

バルセロナを去るころには、

巻物のようなスリングにごく小さい赤ちゃんを入れている

ロハスな感じの奥さんもたまーーーに見るようになった。

デパートにも片隅に抱っこひもが売られていた。

 

ベビーカー主流のバルセロナでも

抱っこひもの良さを感じる人は増えているのかな?

きっと使う理由は、赤ちゃんと母親の快適性。

<人さまに迷惑をかけないため>ではなさそうだ。

魔法の言葉「マダム」

パリに住んで一年になる。

フランス語のレベルは挨拶とスーパーのレジ通過可能レベル・・

マルシェで込み入った会話とかはできない・・

大抵のことを笑顔とジェスチャー、それに推測とウィで乗り切っている(笑)

 

以前住んでいたバルセロナで使っていたスペイン語は

べたーっと発音するところが

日本人にとても合っていた気がする。

書いてある文字をそのままカタカナでローマ字読みする感覚。

 

フランス語は聞いたことのない特有の音がいっぱい聞こえてくる。

心のハードルが上がる上がる・・・

その点、子どもは上手ですね~。

例えばトレビアンのレ。トヘビアンという感じ。

母がやると何か違うらしい。

 

来た当初は、

それまで話していたスペイン語の脳みそが切り替わらず、

どうしてもウィをシィ(スペイン語の「はい」)と言ってしまい、

それを直すだけで4か月かかったっけ・・・

 

それと特有といえば、

リエゾンなど滑らかにつなげて読む習慣。

 

これは笑い話なんだけれど、

例えば、「子ども」という単語が「アンファン」と覚えても

あまり意味がない。

私はいつも3人連れているので、

エレベーターで一緒になる人にかなりの頻度で

「レゾンフォン」と言われていたが、

最初は意味が全く分からず、???で、

レゾン何とかという単語があるのかと

夫に聞いたり、真剣に辞書で調べていた。

すると、それは複数形の冠詞のついた「子どもたち」という単語だったのだ。

 ※Les enfants(レゾンフォン=こどもたち)

アンファンのアの字もないじゃん!

 がーん・・・耳で聞いて覚えるしかない。うん。

 

ところで。

フランス語が分からないなりに日々暮らしていて、

やはりその重要性を感じ、

これだけははったりきかせてやってます、というのは挨拶。

あなためっちゃ話せるんじゃない?と誤解されるくらい流暢に挨拶できます(笑)

 

大事なのは目とタイミング、若干のイントネーション。

そして印象のよい挨拶の最大のコツは、

最後に必ず「マダム」か「ムシュー」をつけること。

 

とりあえずこの挨拶をマスターすれば、

通りすがりの人や、お店の人にそれなりの人物として

認識してもらうことができます。

 

最後につける「マダム」。

これは言われてみればいかに気分がよいかがわかります。

 

 ボンジュールマダム (こんにちはマダム)

 メルシーマダム (ありがとうマダム)

 パードンマダム(失礼マダム)

 

最後にマダム、と添えられるだけで、

背筋が伸び、にこやかに返事をすることができる魔法の言葉。

 

日本語のマダムって、イメージ的に高級感あふれるというか、

時に冷ややかにも使われますが、

こちらでは女性への尊敬の念を表している感じ。

(マドモアゼル(未婚)とマダムで迷ったら

 マダムにしておくことが無難だそう。

 女性の価値は若さじゃないのです)

 

不愛想な人も多いパリですが、

お店でも、マンションでも会った人にマダムと声をかけられると

とても尊重された気分になり、

その言葉にふさわしい行いのできる女性であろうとする自分がいます。

女性を成長させてくれる言葉のよう。

ムシューと言われる男性もしかり。

 

先日、最高にうれしかった「マダム」は

雨の日にすれ違ったお年を召したムシューが

頭のベレー帽をちょっと持ち上げて、にっこりと

 ボンジュールマダム

と言ってくれたとき。

 

寒い雨の日、子どもの体調不良、週末の一人買い出し、

はあ~と歩いていたが、

ムシューの紳士的な挨拶で、

一気に(!)ほわーっと温かい気持ちになった。

 

挨拶ってすごいな。

 

欧州大陸にあって、いろいろな国とぶつかった歴史があって、

互いに敵でないことを示す意味でも挨拶は重要だったんだろうな。

スペインもそうだったけれど、

フランスも挨拶がすごく大切にされている国。

なので挨拶できないと軽蔑される可能性大・・・

 

郷に入れば郷に従え。

日本にいるとお店側が挨拶することはあっても、

お客側が挨拶して入店することはあまりないように思いますが、

ヨーロッパを旅行するときは、

常に自分から目と目を合わせて挨拶しましょう。

きっといい気分で過ごせる確率が著しく上がることでしょう。 

日曜日のバルセロネータ2

住宅街に人影がない日曜日のバルセロナ。

みんな海や山に繰り出していたのだった。

(もしくは親族の家で集合ランチ)

 

バルセロネータと呼ばれる海沿いを歩いて見える景色は

誰もが渇望するであろうビーチリゾート。

まぶしい!

 

ビーチで焼いている人に目が行くが、

よく見ると、水着でなく普段着でビーチの手前にある歩道を

たくさんの人がそぞろ歩きしている。

 

海辺の光と風と匂いを浴びながら、

老若男女がただただ歩いている。

歩くことを楽しんでる。

 

日本で、普段の日曜日ってどう過ごしていたかな?

あんまり思い出せない。

買い物したり商業施設をぶらぶらしていたんだろうか。

 

お店が全部閉まっていると、仕方ないから潔く別のことができるな。

そんなことを思いながら歩いていたら、

 

「ひゃっ!うわーへー!えーー?ほほーーー」

 

と思った光景が目に飛び込んできた。

 

砂浜の片隅に一人のビキニ姿の女性が寝転がっている。

その横にはベビーカー。新生児から使えるフラットタイプだ。

そしてその中にまさに「新生児」と思われる赤ちゃんが入っている。

 

どひゃーー!

日本じゃ1か月健診までは外出すらはばかられるというのに。

 

赤ちゃんへの日差しを遮るように

外部取り付け式の日傘がかかっていて、

すやすやと寝ている赤ちゃん。

そして同じくすやすやと寝る堂々ビキニ姿のお母さん。

 

自由だ!

 

日本のように湿度がないので、

日陰は涼しく快適。

完全リラックスムードの産後ママと赤ちゃんの姿。

 

ランチに訪れたレストランでも

生後2週間という赤ちゃんを連れた若い夫婦とおばあちゃんに遭遇。

ベビーカーに入れたまま優雅に食事している。

レストランの人もニコニコ。

 

気候とミルク育児のなせる業とはいえ、

そもそも誰も母親の行動をとがめない。

産後も果敢にリフレッシュする母親たち。

ところ変わればである。

日曜日のバルセロネータ1

バルセロナの日曜日は不思議だった。

窓の外を見ても人がいない。

車も少ない。

しーん。。。実に静か。

 

確かに日本と違い、

日曜日はほとんどのお店が営業していない。

デパートもスーパーも。

 

だからそういう意味では静かなんだけれど、

じゃあこのピソ(マンション)群の住民たちは

一体全体どこにいるんだろう????

 

あらゆる買い物は土曜日にしかできないので、

日曜日は行くべき場所もなく、

海の方にでも行くか、

今日は山の方に行くかとしばしばドライブした。

 

そして分かったこと。

海と山は人がうじゃうじゃいる!!!

みんな歩いている。寝そべってる。食べてる。

 

そうか。日曜日は自然回帰の日なんだ。

 

バルセロナは神戸のような街で、

背後にほどよい山をしたがえ、眼前には真っ青な海。

海でも山でもどっちも楽しめる、

ほどよい大きさの街なのである。

 

バルセロネータと呼ばれる海をそぞろ歩きして、

トップレスの女性の確率と、

ゲイカップルが浅瀬で楽しそうにはしゃぐ光景を見て、

 

<自由><ありのまま>

 

そんな言葉が浮かび、

青空と青い海の光と相まって実にまぶしい。

 

そしてもう一つ衝撃だった光景は・・・

つづく。

フィリピン人ナニーのリン2

バルセロナの娘の学校で出会った美人姉妹のナニーをしているリン。

この日も通学中のバスで会い、

互いの子ども同士を一緒に座らせ、しばしおしゃべり。

 

私は先日の過ちを告白。。

「貴女のふるまいが本当のお母さんのようで、

 この前、彼女たちの父親に、あなたの奥さん親切ね♪って話かけちゃったのよ・・」

 

リンは嬉しそうに笑ってくれた。

 

「ところで」と彼女。 

「あなたはベビーシッターを雇っていないの?」と質問される。

 

「毎日赤ちゃん連れでしょ。送迎もしているのに、料理も買い物も洗濯も自分で?」

 

そうよ、と私。

 

「じゃあアイロンは?掃除も誰かに頼んでいないの?」

 

とさらに聞かれる。

 

「うーんとね。日本人でお手伝いさんを雇っている人っていうのはすごくお金持ちとか、本当にごくごく一部なの。ほとんどの母親が誰にも頼まずに自分でやってるのよ」

 

と言うと、

リンは心底驚いたように言った。

 

「日本人女性はindependentなのねえ!」

 

Independentという単語が出てくるとは思わず、

しばし飲み込めず、しばらくして、

Independentっていうか、、そういう習慣がないから

お手伝いさんに頼もうっていう選択肢は浮かばないんだよなあ、

と窓の外を見ながら考える。

 

毎日0歳児をベビーカーに乗せて、

混雑するバスに4歳の娘と乗っていた私を相当大変そうに思ったらしい。

 

実際、じりじりと肌を焼く太陽の下、

坂道を往復しバス停に行き、

送った後はそのまま買い物に行き、

重いベビーカーと帰宅し、

昼食を食べさせて、家のことをしたら、今度はお迎えの準備して、

また息子のご機嫌をとりつつ、えんやこら迎えに行き、

これまたお疲れモードの娘と帰宅。

そして夕飯にお風呂に歯磨きに合間合間の授乳に、、

夫は子どもが寝るころの帰宅。

でもまだアイロンは溜まっている。。

強い日差しにまだ適応できていないのもあって、当初はくたくただった。

 

インターナショナルスクールに入れるような家は

お手伝いさんがいるものだと思ったのかな。

いやいや一般の会社員です。

 

でもバルセロナに来て分かったのは、

お手伝いさんを依頼しているのは特別のお金持ちではないということ。

 

一時間1000円くらいの相場で、

週一回溜まったアイロンがけ、水回りの掃除を頼んでいる人、

子供の習い事への送迎を頼んでいる人、

金曜夜の夫婦ディナーデートのため子どもの寝かしつけを頼んでいる人、

多くの人がとっても気軽に家事、育児の一部を他人に頼んでいるのだった。

 

「外出の間に掃除を頼んでおいて、

 ピカピカの家に帰宅するのは気持ちいいですよ」

 

経験者のキラキラしたお言葉。

 

頼んでみたいな。

でも、根っから日本人の私。

主婦業を人様にお願いすること、

人様を家のプライベートな部分に入れることにどうも慎重な自分がいる。

 そして目の届かないところで子どもに何かあってはいけないから、

人選は重要だ。

 

その点リンみたいな人はいいなあ。

そう思ったとき、リンは言った。

 

「私は月曜から土曜の午前中までこの家で働いているから

 あまり役には立てないわね。もし日曜日に必要があったら連絡して」

 

本当のお金持ちは雇い方も大胆である。

 

この日はこんなことを叫びたくなった。

 

「日本のお母さんって偉すぎる~!!!」

 

核家族。長時間勤務の旦那。

母は一人でいっぱい抱えてる。

そして食事も、どの国より手が込んでるものを期待されているのじゃないのか。

バルセロナもロンドンもパリも朝食もお弁当も超簡単だし!!

 

ああ日本のお母さん、堂々と手抜き・息抜きしようじゃないか!

まずは自分で自分にそれを許してあげること。

ね。どうでしょう?

フィリピン人ナニーのリン1

バルセロナで幼稚園時代を過ごした娘は

インターナショナルスクールに通っていて、

最初のうちは公共バスで通学していた。

 

通勤通学で混み合うバスで、

頻繁に会うのが、娘と同じ学校の小さな姉妹。

お人形のように目がくりくりとした金髪美人姉妹だ。

 

彼女たちに付き添っているのは、褐色の肌に黒髪のアジア系の女性。

一方、金髪の姉妹にはアジア人の面影はない。

 

お手伝いさんかな?

 

でも待てよ。

バルセロナで暮らしていると、

白人のカップルが中国系や黒人の赤ちゃんを養子にして、

ベビーカーに乗せて歩いているところを時折見かける。

 

見た目は全く違っても親子。

つまり見た目の違いでは測れない親子関係がよくあるのだ。

 

彼女たちはどうなのかな?

 

アジア系の彼女はバス内でいつも親しみを込めて視線を送ってくれ、

英語も堪能。ベビーカーと乗車する私をいつも気にかけてくれて、

バスのチケットがセンサーにどうにも反応しないときは、

新しいチケットまで分けてくれた。

 

ただ付き添っているというのではなく、

バス内で姉妹のふるまいをたしめる真剣さや、

愛情あふれる視線はお母さんそのもの。

 

そして何より、

学校で出会う他のシッターさん達より

社交的で常に堂々としていた。

 

そんな様子からきっとお母さんなんだろうな。

そう勝手に思っていた。

 

ところが、それは大間違いだった。

 

ある日、珍しく父親と登校してきた姉妹。

私は父親に挨拶し「貴方の奥さんはとても親切ですね」と話しかけた。

 

「???」

 

「あれ?」

 

「ああ!リンのことか!彼女はナニーさ」

 

と。

 

はあーーーーーやっちゃった!!!

フィリピンから来たお手伝いの女性だったのだ。

幸いご主人が気を悪くした様子はない。ほっ。。。

でも穴があったら入りたい。。。

 

いやー決めつけるのはいけない。

つくづく。

 

後日、本物のお母さんが一度だけ(!)学校に現れた。

とんでもなく華やかでモデルのような人。

毎日リンが子どもの送迎も買い物もご飯も作ってるんだから

生活感もないはずである。

でもほんとう、この母にしてこの美人姉妹。 

 

よく気の利く、実に賢そうなリンをナニーに雇えた彼らはラッキーだな。

リンはそんな風に思わせる魅力のある女性なのである。